やまわろ

ティーンズ
08 /05 2012
やまわろ
やまわろ釛子 ふたみ

大日本図書 2010-10
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表紙の絵が綺麗だったので読書。ミステリーふう(?)で読み始めからわくわくしました。多感な年頃の高校生が授業の一環として山登りをさせられるのだけど、それぞれに思ってること考えていることが折り重なって、その上に河童ならぬ山童(やまわろ)の存在が霧のようにまとわりついてくる。寂しい山の生活にやまわろは友達を欲しがっているという、やまわろでなくとも人はいつも誰かを欲しがり寂しがっている。そんな人間の性についてこの物語は光を当てているのだろうなと思いました。恋人がいても友達がいても一人ぼっちでも、皆一人の人間として一人分の寂しさと悩みと友を欲しがる心をもって生きてる。一人じゃないという言葉は一人だから生まれてくるのかなと思ったりもした小説でした。
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月の少年

ティーンズ
07 /10 2012
月の少年
月の少年沢木 耕太郎 浅野 隆広

講談社 2012-03-31
売り上げランキング : 129333


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子供向けのお勧めにあって綺麗なのと月という文字に惹かれ読書。
以前
あなたがいる場所を読んでいました。その作者の小説です。
冬馬は両親を亡くし水の家と呼んでいる湖近くに住んでいる彫刻家のおじいさんの家で一緒に暮らし始めます。周りの皆は冬馬に優しくしてくれるけど、だんだん彼は学校に行きたくなくなりやがて行かなくなります。
そして昼と夜が逆転した生活を始めるのですが、ある満月の夜に湖に船が浮かんでいるのをみつけます。

学校に行きたくないという孫に、おじいちゃんは黙ってそれを許します。夜遅くまで起きて昼は寝ている冬馬に何も言わず毎朝朝食を用意してあげる。声もかけずただじっと自分の仕事を続けるおじいさん。その姿をそれとなく眺めながら湖と山の自然に触れ少しずつ心をほぐしてゆく冬馬の姿が素敵です。
私だったらつい学校行けとかいいたくなってしまうなぁ(汗)

珍しく早起きした冬馬といっしょに朝ごはんを食べた後のおじいさんの言葉がいい。食器洗いを進んでやった冬馬に「ありがとう」という。このエピソードが好きです。

小船に乗った男の子と話し、不思議な笛を鳴らす冬馬。最後はなんともいえない心が温かくなる終わりです。「あなたがいる場所」の作者だなぁと思いました。

怪物はささやく

ティーンズ
06 /03 2012
怪物はささやく
怪物はささやくパトリック ネス ジム ケイ

あすなろ書房 2011-11-07
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これ良かったです。今年のベスト本3冊のひとつ。
娘の学校の図書室にお勧めで置いてあって、保護者会のときにいつも私はここの図書館をチェックするのです。学校の司書さんの選書がいつもナイスなので、娘の学校を訪れた時の楽しみの一つです。
中高生の夏の課題図書にもなっています。

イギリスの作家シヴォーン・ダウトさんの書いた原案をアメリカの作家パトリック・ネスさんが文章にした本。ダウトさんは亡くなっていてネスさんが原案を引き受けた、ともうその段階で書いたネスさんの苦労が目に見えるようでした。とても丁寧に原案に忠実になろうと書かれたんじゃないだろうかと読後思いました。感情の一つ一つとりこぼすことのないように、しっかり順々に書かれたように感じた。

コナーの母は長く病を患っています。それによってコナーの心が重くなり、学校でも苛められるようになる。そして毎晩悪夢をみてうなされるようになり、現れた怪物はイチイの木の大男だった。
怪物とコナーの関係、語られる三つの物語、どれも夢が無く救いがないように思える。素晴しいことなんてなにもなく奇跡なんて絶対起きない、なぜこんな辛い毎日を生きなくちゃならないのか…。
最初からくりかえし本書で言われる言葉は四番目の物語は君が(あなたが)語らなくてはならない、というもの。三つの物語を聞いた後、コナーはそして私は物語を語る勇気を得ることができます。
それはどんな物語かって?読んでみると分かります。深夜に読み終わり今朝私も語りました(^^)ここだけの内緒です。

ひとつひとつの物語やディティールから知らない間に力を貰う。それも腹の底にたまってくるような、ずしんと重いもの。理解とかじゃない、同情でもない、共感という軽い物でもなく、それは確かに寓話でありながら手にとってみることのできる目に見えない何かでした。
四番目の物語を語られた後の怪物の言葉がいい。私はここがクライマックスでした。
知ってるこの人私の事しってる!!!(><)って思ってしまう。
あんまり書くとねたばれになってしまうので、書かずに終わります。気になる方は是非読んでみてください。

大好きな銀のロバひとりぼっちのエルフも思い出した。

死をみつめて (中学生までに読んでおきたい哲学)

ティーンズ
06 /03 2012
6死をみつめて (中学生までに読んでおきたい哲学)
6死をみつめて (中学生までに読んでおきたい哲学)松田 哲夫

あすなろ書房 2012-04-23
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新聞広告で見て読んでみたいなと思って読書。中学生までに読んでおきたいという言葉から分かりやすい読みやすい本なのではないかなと思って手にとってみました。

死にまつわる作家の様々な短文が紹介されています。有名な作家やTVでみたり自殺した作家もいます。そんな前置きをあまり気にせず読めたのは短いのと死に関する言葉が簡潔だったからかなと感じました。死と一言にいっても様々なものがあり、精神的なもの肉体的なもの、またその両方と、改めて人間にとっての死という感覚概念について個人的に生物的に考えさせられた一冊でした。

最後のほうは戦争の話になっていて、読むのしんどいのですがやめられなかった。ひとつひとつ重く胸に残る文章ばかりでした。シベリアで捕虜になった石原吉郎の「確認されない死のなかで」は何度も読み返しました。朝食を食べながら眠るように死んだ隣の席の人を見て”人間はけっしてあのように死んではならない”と強く思った石原吉郎の言葉の連なりはずっしりと心の底にしみました。
死を想う時に誠実でありたいと思いました。

戦火の馬

ティーンズ
04 /08 2012
戦火の馬
戦火の馬マイケル モーパーゴ Michael Morpurgo

評論社 2011-12
売り上げランキング : 7037


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映画の原作を読書。この本とても読みやすく分かりやすい文章で描かれています。小学高学年から中学生向きだと思う。この年代層に読んでもらいたい本です。主人公は馬のジョーイ、あらすじは映画を観たのでわかっていたのですが、映画とは違う部分もあり、違った面白さを感じながら読みました。
まず最初ジョーイがアルバートの家に来るいきさつからして違います。試写会でタレントさんが父が牛を買うつもりが馬を買ってきた、と説明されてて映画と違うなぁと思ってたのですが、原作のストーリーを言っていたのだとこれを読んで始めて分かりました。映画では農耕馬を買うと変更されています。こういった違いをみつけながらまた映画を観たくなりながら読みました。

映画は映像で物語をとらえるものとすると、原作は文章で馬の人生を語っています。馬のジョーイの言葉は人間には通じません。寡黙な馬達の心を通して人間の戦争を見るこの小説は、人としての愚かさ、生き様の美しさ、そして馬と共に生きることの素晴しさにみちてます。
後書きに、作者は実際騎兵隊に参加した兵士の体験談を聞いてこの話を書いたとあります。戦争の中に馬がいる生活、前線の様子を思い描きながら読みました。

ジョーイの静かで的確な観察眼に誘導されながら物語を読み進むと、色んな人のいろんな人生が見えてきます。映画ではカットされちゃったんだけど、黒馬トップソ-ンをこよなく愛した肉屋のフリードリヒのエピソードが好きです。馬に話しかけて一人笑ってばかりいるから他の兵隊からは馬鹿だと思われているフリードリヒ、しかし彼はなきたくなるのをこらえる為に笑っていて、哀しみを紛らわせるために馬に話しかけてる。
「いいかい、連隊じゅうでまともな人間は俺だけだよ。アホウなのは自分たちのほうなのに、わかってないのさ。だって、やつらは、何のためか分からずに戦争しているんだからなぁ。頭が変だろ?着ている軍服の色が違うだけ、しゃべる言葉が違うだけなのに、どうしてそれだけの理由で人殺しができるんだ?なのに、俺のことアホだとさ!このばかばかしい戦争に来て出会ったなかで、分別があるのはおまえさんたちだけだよ…」
とジョーイたちに話かけてる。

そしてトップソーンの体調が悪くなり、獣医が彼を診てこう言います。
「こうなることはわかっていた。そう言っただろう」獣医は独り言のようにつぶやいた。「無理なんだよ。よくあるんだ。食糧不足なのに過重労働で冬じゅうやってきたんだものな。よくあることなんだ。こういった馬には耐えられないんだよ。かわいそうに、心臓をやられてしまった。みるたびに腹立たしくなる。馬をこんなふうに扱ってはいけないんだ・・・機械とは違うんだから」(P126)
ここらへんは人間の事も語ってるように思えてなりませんでした。

作者の馬に対する愛情が文章の端々に表れていて、それも読んでいて楽しかった。ブラッシングしてもらう時の嬉しさや、つめたい水をバケツに貰った時の喜び(トップソーンはかならず飲む前にバケツの中で頭を振ってジョーイを困らせる)とか、ふすまいりの干草の美味しさとか、馬の個性や生きる様子が細かく描かれているのもよかった。

最後のエミリーのおじいさんとの会話もよかったです。とくに劇的に書かれていないけど、そこには生きる喜びと悲しみと老いる辛さと、でもそれでも幸福であろうとする生き物の形を感じ取ることができる。気がつくと胸がいっぱいになって泣いてしまう、そんな小説でした。


調べてみたら
モーツァルトはおことわり
モーツァルトはおことわりマイケル・モーパーゴ マイケル フォアマン

岩崎書店 2010-07-30
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の作者でした。去年読んだ絵本の作者でした。
この絵本も戦争についての話でした。

世界で一番の贈りもの
世界で一番の贈りものマイケル モーパーゴ マイケル フォアマン

評論社 2005-11
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この絵本も…前線でのエピソードを思い起こすお話です。
こういった話がもっともっともっと増えると戦争は無意味だって実感できるようになると思いました。

クマのあたりまえ

ティーンズ
10 /15 2011
クマのあたりまえ (teens’ best selections)
クマのあたりまえ (teens’ best selections)魚住直子 植田真

ポプラ社 2011-08-02
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植田氏の挿絵の魚住さんの本。それだけでわくわくして読みました。いろいろな生き物が主人公の短編集。かわいらしい、それでいて切ない命のお話です。
「べっぴんさん」、「アメンボリース」(アメンボの話)、朝の花火(蛇の話)、他「ひかる地平線」のライオンの話も、「クマのあたりまえ」もみんなよかった。魚住さんの辛らつででもやさしい、生命の輝きと闇の世界を楽しみました。

クマのあたりまえの最後の場面、おしりがふたつならんで消えてゆくというくだりがかわいかった。ライオンの軟弱で貧弱ででも生きてる感じもよかった。べっぴんさんの気高い美しさが終わるとき、蛇の対極にあるやさしさもよかったです。
お魚の話もよかった。ちょっとした命の瞬間、心の通う一瞬を閉じ込めたお話しでした。
植田さんの描く色んな動物と、カーテンもよかったです。この表紙のクマの絵、これがお話しの全てなんですよ。読んでみたくなりませんか(笑)

忘れないよリトル・ジョッシュ

ティーンズ
06 /02 2011
忘れないよリトル・ジョッシュ (文研じゅべにーる)忘れないよリトル・ジョッシュ (文研じゅべにーる)
マイケル モーパーゴ 牧野 鈴子

文研出版 2010-12
売り上げランキング : 335727

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課題図書の一冊。表紙と題名が印象的だったので読書。
2001年のイギリス、農場に住むベッキーはクリスマスに貰った日記帳に新年から日記をつけ始める。お父さんやお母さん、そして大切な家畜や犬、馬とごく平穏にくらしているが、ある日、口蹄疫が発生する。

実際にイギリスで流行った口蹄疫の様子を、少女の視点から追いかけている物語、フィクションだが作者が同じような体験をしていて、それを元に書かれたことが巻末に記されている。

かわいい馬のルビー、ウェールズ種の羊、まじめに仕事をするお父さん、がんこなお母さん。徐々に広がるウィルス。動物に愛情を持って接しているベッキーの一家にも、暗雲がたちこめます。やがて来る処分の通達に家族は悲しみにくれます。
家族同然にかわいがっていた家畜を失う悲しみは、全て理解てきないと思うけど、その辛さを想像することはできます。今まさにその被害にあっている人達がいる中で、この本が多くの人に読まれることを望みます。
どうして殺さなくてはならないの、というベッキーの言葉。お父さんの、私が悪い事をしたのでしょうか、という思い。仕方が無いでは片付けられない想いに寄り添う一冊。

月夜野

東京下町在住・本・建築・ハチロク好き