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あなたは私の手になれますか

まじめな本
06 /23 2012
あなたは私の手になれますか―心地よいケアを受けるために
あなたは私の手になれますか―心地よいケアを受けるために小山内 美智子

中央法規出版 1997-03
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新聞で紹介された本をリストアップして壁に貼っているのだけど、ずっと読みたいと思って壁に貼っておいた本をやっと読書。図書館になくて直接リクエストしなくてはならなかったのも一因。新聞で紹介された本はできるだけ図書館にあるといいなぁ(小さな希望)。
モラージュ菖蒲の三階にある書店アカデミアは毎週メジャー紙と地方紙の日曜版で紹介されたすべての本を、入口に並べてあり、必ずチェックして楽しみます。それぞれの新聞の個性と、何を薦めているのかが一目で分かって面白い。丸の内丸善もコーナーがあるのだけど物足りない感じがしてあまりみない。

読んだ新聞はケアについての記事でした。生まれながらに脳性マヒをわずらっている著者のケアを受ける側からみた介助のエッセイ(コラム)です。最初に読み終わった後に本を投げてしまってもかまわない、このような本がいらない世の中になってほしいと書かれていて、読んだ後に投げてもいいという前文もすごいなぁと想いながら最後まで読みました。
この本、あまりいい本ではありません(笑)。作者の愚痴がずーっと書かれてます。抱き起こす起こし方から、歯の磨き方体の拭き方言葉のかけ方すべてにおいての意見が書かれてます。ここまで細かく書くことがすごいとまず最初にそれを思いました。手がなく思うように動かない体で文章を綴るというのは少しでも大変なことと想像します。それなのにここまでいろいろ語るのはすごいなと思いました。そして次にそれほどまでに受ける側というのは色々感じてきているんだなと思いました。ただ体を洗えばいい、歯を磨けばいい、ではない、そこには生きることを諦めず日々真剣に真摯に生きたいという作者の強い想いがあると感じました。
歯の磨き方にはっとしました。子供二人を育てていて二人とも10歳までは仕上げ磨きをしてきました。乳児期に虫歯がないと永久歯は強い歯が生えてくると聞いて大人になっても元気に歯で食べ物を食べられるようにという親の願いからひたすら磨いてきたのですが、はたして子供の側からして心地よい歯磨きであったかなと、10歳ですからもう逃げないけど歯磨き嫌そうだし、それに磨きのこしもできました。心地よく丁寧な歯磨きを心がけてなかったなぁ、じゃぁどんな歯磨きがいいのだろうと今になって考えています。

介助する側は”してあげる”という立場からついついその細やかな配慮が抜けてしまいます。受けるほうはしてもらうまで何もできずじっとしているわけで、その間に色々考えて感じているわけです。動くほうはたくさんの仕事の一つなわけで次はあれしてこれして、あああれはどうだったんだっけなとか考えながらしてるので心をなくしやすい。
心臓病の弟がベットの上からみた世界は違っていて、時々面白いことを言いました。次から次と慌しく動く私達を遠い視点から見ていたのでしょう。
「自分の体のようにお尻を拭いて」と作者は始めてトイレの介助をしてくれる人に言います。自分の体のようにというのは大切に、という意味ですが、時に人は自分の体を粗末にしたり気にかけないときもあります。作者は強く拭いてほしいけど、それを言葉にできないという。
ごしごし体を洗いたい日もあれば、一日の労をねぎらいながらそっと石鹸をつけて撫でて洗いたい日もある。そんな感情も含めて自分の体のように拭ける日がくるときっとそれは素晴しい日になるんだろうなと思いました。
こんな感じ方もあるんだなぁと考えながら読みました。
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月夜野

東京下町在住・本・建築・ハチロク好き