エンジェルフライト

まじめな本
07 /10 2013
エンジェルフライト 国際霊柩送還士
エンジェルフライト 国際霊柩送還士佐々 涼子

集英社 2012-11-26
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海外で亡くなる日本人が多くなり、飛行機に乗って遺族が身元確認に行かれたり、ご遺体がもどってきたりというニュースを見るたび、その水面下で働く人のことを想ってきました。どんな仕事なのかどのようにして事は運ばれてゆくのか、素朴に疑問に思い読書。 国際霊柩送還士というのは登録商標になっているそうです。エンジェルフライトというのは会社名で様々な事情で国を離れなくなった日本の人を家族の元にまるで生きているような姿でもどしてあげるというお仕事。

まったくお恥ずかしい話なんですが、入国手続きを亡くなった人の代わりにして運んできておしまいって単純に想っていました。無知の知です。そんな生易しいものではなく、国も違えば亡くなり方も違う、国際事情や政治事情様々な物事に対応しながら世界にたった一つしかない身体を待ち望んでいる家族の友人の親戚の元に還してあげる。そんな仕事なのです。まずご遺体が空を飛んでくることの変化というのに驚きました。私達は海外旅行という言葉にあまりに楽観的に幸せな印象を持ちすぎています。国籍のある地から離れ、面識のない土地で死ぬことの怖さをこの本で何度も思いしらされました。でも私達は生きているし旅行だってしたい、するだろう、その時最大限にできるのは保険に入っていることだそうです。これから旅行に行く人には言っておこうと思いました。

話は徐々に死ぬことと生きていることの不思議に迫ってゆきます。会社の従業員一人一人の生い立ちや、なぜこの仕事を選んだのかという人生を細かく追うことによって、一人一人が誠意と誇りをもってこの仕事をしていることが分かります。私も以前慶弔料理の仕出弁当屋で働いていて、葬儀社の人を何人か知っています。一種独特な世界で、だからこそ知られていない部分や物事がたくさんあって驚きました。この本はその世界をなるべく誠実に正確に描こうとしていると思いました。

その仕事柄どうしても死について語らなくてはならず、必然として生きることも語らなくてはならなくなる。筆者の過去や人生の岐路についても語られ、少々堅苦しくなってはいますが、まじめに仕事のことを考えると避けては通れない部分だなぁと思いました。

最後のほうで文章にすることに迷う筆者ですが、本で何度も語られているように、一人一人ひとつひとつの家族にそれぞれの哀しみ方があり、愛の形がある。それは誰にも完全に知る事のできない世界であると痛感します。だからこそ人はひとりなのだと、その誰にも譲れない哀しみを持つことがもてることが一人として生きていることの本当の証なのかもしれません。

印象に残った言葉はいくつもありますが、特にいいなぁと思ったのは

P232 人は生きてきたように死ぬ

です。それから

 ”悔しい思いをしなければ、仕事はできるようにならない、と彼女は断言するのである。”(P131)

いつまでも満足できず悔しいと思い続けてる身としては励まされる一言でした。

死も含めて長いスパンで生きることを考えた時、読み返したい一冊です。
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月夜野

東京下町在住・本・建築・ハチロク好き