アンダーグラウンド

村上春樹
03 /28 2015
アンダーグラウンド (講談社文庫)
アンダーグラウンド (講談社文庫)村上 春樹

講談社 1999-02-03
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確か一月下旬ごろ、ニュースでサリン事件の時の救急電話対応の録音が一部公開されました。仕事から帰ってきて夫からそのことを知り、ネットでその数分間のやりとりを聞いているうちに、読み返したくなって読書。ちょうど事件があった同じ地下鉄に乗って通勤しているので、通勤時間にちょっとずつ読みました。単行本で出た当初読みました。たぶんあれから15年ぐらいたってる。単行本は重たいので持ち運びできなくて文庫本で読みました。一ヶ月以上かかったかな。怖くなったり、泣きそうになったりしながら読みました。

一度しか読んでいなかったのですが、結構内容を覚えていて、読みはじめると思い出した。でもかるく十年以上たっているので、昔の自分とは違う視点で読めた。たとえば、50歳代の中小企業社長さんの一言や、昔苦労したという下町のおじさん、妻が子供を出産したばかりという若いお父さん、そのバックボーンというか、インタビューを受けている人たちが何を言っているのかがより深くわかった。そして村上さん自身が気をつけたであろう公平に冷静にインタビューした人をとらえ観察し語っている文章がわかりやすく、またその人物を想像することができました。

最後の「目印のない悪夢」では、以前読んだときは、地下鉄の職員の任務に対する行動にたいしほめていたのが印象にのこっていたのですが、今回は実行犯の人たちが陥った闇の深さ、その人間性の薄さが心に残った。今ふらりと”あちら側”に行ってしまう若者がいるけど、村上さんはこの当時からその部分に気づき危惧していたんだなぁと思いました。冠がると怖い話です。そしてまた救護にあたった普通の人たち、そして信念をもって生きる社会人の想いの強さを感じました。
ここらへんの気持ちが授賞式で村上さんが自分は弱い立場にいたい、とスピーチしたもとになっているのかなぁとも思った。

事件があって一年半から二年ぐらいしかたっていないのに、犯人に対してあまり怒っている人がいなかったのも、気になった。以前はそんなものかなと思っていたのだけど、体を大事にしながら毎日過酷な通勤列車にのっている男の人たちがそんなに軽く考えるはずがない。体を大事にしているのだって、通勤列車に乗るのだってみんな家族が大切だから、自分の体を壊されるってことは家族を壊されることに等しいわけで、それが”あまり思い出したくない”とかかかわりたくないという人がいるのは、逆にいやおうなく自分の人生にかかわってしまっていて、それはあきらかに負の部分で、それ自体はどうしようもできなから、だから、考えたくない、もう怒りを通り越した赦しなのではないか。これ以上怒って自分を痛めつけたくないから怒らないんじゃないかとそう思いました。それほどまでに深く強く人を傷つけるのは、やはり何年たっても酷い許されざる出来事だと改めて思いました。最後に亡くなられた人のご冥福をお祈りいたします。
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月夜野

東京下町在住・本・建築・ハチロク好き